vol.3 水の恵み

名水の里でふくよかさをまとう

東温市河之内で、太陽と土と水だけを養分に、無農薬・無肥料で育ったこしひかりは、西条市にある首藤酒造で醸されます。美しい棚田の里をあとにしたお米は一転、名水の里へと運ばれ、ふくよかさをまとった日本酒になるのです。
西条市の天然水はこれまでに、日本名水百選に選ばれ、全国利き水大会で日本一の栄誉にも輝きました。そこまでおいしいのは、石鎚山系の伏流水が、市内を流れる加茂川や中川を経て、随所で湧きだしているためですが、山から瀬戸内海までの距離が短く、高低差が大きいことで、川が急流で淀まず、水を悪くする成分が溶け込みにくいからだといわれています。

水の個性をお米で肉付けして表現する。

菊樹を“テロワール日本酒”と呼ぶのは、東温市の気候や棚田の地形、質の良い土壌、石鎚山系からの清冽な水の恵みなどの環境要因から、その土地でしかつくり得ない酒だからです。
その水はやわらかく、癖がありません。昔より、酒づくりの勘どころは米研ぎにあるといわれ、付着した糠を洗い流す洗米・浸漬(給水)は、酒づくりの重要な工程です。

天然水

お米が吸う水は、お米の品種や産地、精米歩合、その日の気温や水の温度などに左右され、なにより水の性質がものをいいます。
日本酒のおよそ7割以上は、水でできているといわれます。お米とおなじほど大切で、酒を表現するとは、水の個性をお米で肉付けして表すことなのです。
水は日本酒に命を吹き込みます。首藤酒造が井戸から汲み上げ、洗米や浸漬に使用している天然水は、農場のお米の旨味を生かす、命の水なのです。

優しい甘味の酒に醸すために、蔵も真剣勝負。

「こしひかりは炊いておいしいお米ですが、蒸したらどうなるんだろう。もちもちした特有の粘りを酒に生かすにはと考えあぐね、洗米と浸漬が鍵を握ることに行きつき、これだ!と納得のいく給水法を発見しました」と首藤酒造の蔵人はいいます。
吸水時間が短いと、水分不足でお米が充分に蒸されません。逆に長いと、醪(もろみ)の発酵過程で溶けすぎてしまいます。給水時間を間違えると、麹や酒母づくり、醪の具合など、後々の工程に大きく影響します。
杜氏は最適な状態の蒸米に仕上げるため、経験とデータを駆使し、秒単位で洗米・浸漬の時間を決めます。
菊樹のふくよかで丸みのある味わいは、米に吸わせる水の性質と量が決めていたのです。
酒づくりは嘘がきかない仕事。愚直なまでに自然栽培にこだわったお米を、炊きたてのごはんのような、優しい甘味の酒に醸すために、蔵もまた真剣勝負で立ちむかいます。

 

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