米の味、水の個性、菌の働きなど、酒づくりに嘘はきかない

農場の「こしひかり」をはじめて口にしたときの印象は、今でも鮮明です。お米の弾力、噛ほどに口のなかで広がるやさしい甘味など、蔵人として長年酒をつくってきましたが、これまでに味わったことのない強烈な存在感でした。
つい百年前まで、農業はすべからく自然農法だったのに、化学肥料や農薬の登場で、自然界から一歩身を引いてしまったようです。田んぼは正直ですね。食物の味を変えてしまいますから。
だからこそ、農場主である菊池勝義さんの「安全で安心な米づくり」そして「飲むことでからだが健康になる酒づくり」への情熱に、蔵人としても、きちんと応えていかなければなりませんでした。
酒づくりは嘘のきかない仕事です。米の味、水の個性、菌の働きなど、ごまかしようがないのです。
とくに、農場のこしひかりは〝飯米″。本来、食べるためのお米であって、酒造り用のお米ではありません。炊いて口にしたときの、あの優しい粘りと甘味を、どうしたら酒に生かすことができるかと、思案を繰り返しました。
思案の末、少量の米を数通りに分け浸漬し、蒸す際の蒸気圧の加減も工夫して、硬さ、ねばりなどを試しました。最終的には、45%の精米歩合に合った給水時間を発見でき、種麹も吟醸用の種麹を使用。酵母は愛媛県の酵母である「EK-1」を使用して、醪では吟醸造りと言われる低温発酵管理に努めました。
研ぎ水は、西日本最高峰、霊峰石鎚山系の伏流水を原水とする自社井戸水、性質は軟水でとてもやわらかい天然水です。蔵のある愛媛県西条市には、この水質の良さを求めて酒蔵の他に全国から飲料メーカーや、ビールメーカーがやって来ます。
この水の個性を、こしひかりで肉付けして「菊樹」の味わいが完成します。

No.1よりOnly1を目指す日本の酒へ。

「菊樹」は穏やかで料理の邪魔をしない酒です。心地良い香りと、柔らかい旨味が口の中に広がります。米の味をそのまま酒にしました。毎日飲んでも、飲み疲れしません。誤解を恐れずにいえば、飲むほどにからだが楽になっていく酒です。
菊池さんが求めていた酒に、少しでも近づくことができたとしたら、蔵人の冥利につきます。
第一期の醸造では、お米の中では小粒のこしひかりが割れないよう、45%の精米にしました。
第二期では、米の強さや粘りが解ったので、40%精米に挑戦して成功しました。香りはより芳醇になり、吟醸感が増しているはずです。
「菊樹」はこれからもっともっと進化していける酒です。精米歩合も30%台にまで挑戦できると思っています。No.1よりOnly1を目指した日本酒にすることが、首藤酒造として目指すところです。

ここ数年、日本酒もプレミアム化が進んできました。高額なワインと肩をならべる価格の日本酒が、世の中に出回る時代になってきましたが、プレミアムの価値観とは、そのお酒が誕生するまでのつくり手の努力や想いが、どれほど詰まっているかだと思います。
「菊樹」は米のつくり手と、酒のつくり手が、お互いに協力し、切磋琢磨してできた賜物です。得体の知れない微生物や菌の働きに一喜一憂しながら、米づくりに精をだし、醸して歓び、また醸す。数千年の間つづいてきた習わしに、農場も蔵もどこまでも忠実です。

首藤酒造の概要

名称:首藤酒造株式会社
代表者:首藤壮一郎
所在地:愛媛県西条市小松町大頭甲312−2
代表銘柄:寿㐂心(すきごころ)
こだわり:霊峰石鎚山の麓、伊予西条市で約120年も前から、酒造り一筋。石鎚山系の名水に恵まれ、兄弟3人だけで仕込む日本酒代表銘柄の「寿㐂心(すきごころ)」は、祝いの席や嬉しいことがあった時に飲んで欲しい酒。添え・仲・留の三段仕込みで行う酒づくりでは、一品種の仕込みを終えてから、次の樽を始めます。酒づくり効率ではなく、ひとえに愛情です。
URL: http://sukigokoro.co.jp/

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